足三里の灸
足三里の灸による養生法
養生というと食養から始まり、運動、睡眠と、本サイト内にも説明のある内容を指導するところが大体だと思います。
明治以前の日本にはお灸(やいと)の文化がありました。その中でも足三里に灸をして、養生(元気に長寿でいること)するのが当たり前に行われていました。
このたび、研究発表として松本元泰の『一灸万全』を読み解いたところ、その中に具体的なやり方が書いてありましたので、以下にまとめます。
- 艾炷の大きさは米粒大程度。
(一般の方は近くの鍼灸師に指導してもらうか、市販のシールのお灸でも可) - 痕がつかないように8分でとどめてもよいが、できるだけ緩和して焼き切る。
- 艾炷の壮数(据える数)は下の表のようにする。
壮数 左足 右足 1日目 9 8 2日目 11 9 3日目 11 11 4日目 11 9 壮数 左足 右足 5日目 10 9 6日目 9 9 7日目 9 8 8日目 8 8 - 対象のツボである足三里の取り方は以下のやり方を基準とする。
膝を立てて、脛骨を下から擦り上げていくと、脛骨粗面にあたります。
その下端の線上で外側に前脛骨筋の筋腹上に凹んでいるところに印をつけます。
その辺りを少し押し込んでみると上下に響くところがあります。
それを足三里とします。(写真参考) - とにかく毎日続ける。
効果としましては、以下の3点があるとされています。
- 胃腸の働きを調える。
- 顔のほてりなどののぼせやすい体質を正常にする。
- 足の疲れを癒やす。
ぜひお試しください。
過去の文献等における足三里の灸
- 『徒然草』(1330ころ成立)吉田兼好
「四十以後の人、身に灸を加へて三里を燒かざれば、上氣のことあり。必ず灸すべし。」
足の三里に灸をすえるとのぼせや喘息などを落ち着かせることができると書いてある。 - 『おくのほそ道』(1702成立)松尾芭蕉
「・・・ももひきの破れをつづり、笠の緒付けかえて、三里に灸すゆるより、松島の月まず心にかかりて・・・」
江戸時代は「三里に灸していない人と旅を共にするな」とも言われていたようで、この文章からも三里への灸というものが庶民にも一般的だったことが垣間見える。 - 『養生訓』(1713出版)貝原益軒
毎年二八月に、天枢、水分、脾兪、腰眼、三里を灸すべし。京門、章門もかはるがはる灸すべし。脾の兪、胃の兪もかはるがはる灸すべし。」
養生訓の中に「三里に灸」という記述は3箇所あったが、上に記した文では「内臓が弱い人の灸」としてあげている。ほとんどおくのほそ道とほとんど同じ時代に出版された。 - 百姓万平の話
江戸時代のよもやま話で、万平じいさんが240歳くらいまで生きていたという話。ついでに妻や息子、孫までも150歳を越えていたというお化けみたいな家族。
徳川家斉に謁見し、長寿の秘法を問われた際に「両足の三里に灸するのみ」と答えたとか。 - 原志免太郎先生の研究と養生灸
灸の研究で博士号取得した「お灸博士」として有名になり、108歳で逝去される最期の2ヶ月間は長寿男性の日本一にもなった先生。
「三里の灸と腰部の八点灸」を推奨しており、ご自分で実践されての108歳なので、ダントツで説得力がある。